USミルウォーキーが生んだエモの金字塔、「THE PROMISE RING」が2002年に発表した4thアルバムの再発盤。EPITAPH傘下のANTI-からのリリースという当時としては異例の移籍作。”30° Everywhere”、”Nothing Feels Good”、”Very Emergency”とJADE TREE時代の名作3部作でエモを代表する存在となった彼らですが、本作制作前には中心人物Davey von Bohlenが脳腫瘍を患い手術を経験。その大きな転機を経たことで、音楽性も劇的な変化を遂げました。初期作品を象徴した疾走感あふれるエモパンクは影を潜め、代わって60〜70年代ポップスやアメリカーナ、パワーポップ、さらにはTHE BEATLESやBIG STARを思わせる普遍的なメロディーが前面へ。とはいえ決してエモを捨てたわけではなく、感情表現の方法を絶叫から歌へと置き換えたような作品であり、その温かく包み込むような空気感は唯一無二です。どこか力の抜けたDaveyの歌声、優しさとユーモアが滲む歌詞、シンプルながら胸を締め付けるメロディーは、90年代ギターポップやパワーポップの名盤群と並べても全く色褪せません。一方で、その柔らかなサウンドは後のインディーポップやエモリバイバル勢にも大きな影響を与えた歴史的作品でもあります。ジャケットを手掛けた写真家Chris Strongによる印象的なアートワークも、本作の穏やかでどこか希望に満ちた世界観を完璧に表現。キャリアの転換点でありながら、THE PROMISE RINGというバンドの本質、人間味、優しさ、そして圧倒的なソングライティングが最も美しく結晶化した、今なお色褪せることのない名盤です。