USカリフォルニア州イーストベイのエモ〜パンクバンド「JAWBREAKER」による1990年リリースの1stアルバム が、バンド自身のレーベルBLACKBALL RECORDSより再発。オリジナルはサンフランシスコの名門SHREDDER RECORDSからリリースされており、後のエモ、ポップパンク、オルタナティヴロックに計り知れない影響を与えることになるJAWBREAKERの原点を記録した作品です。80年代末〜90年代初頭のベイエリアでは、OPERATION IVY〜CRIMPSHRINE〜FIFTEEN周辺のDIYパンク文化、そしてMAXIMUMROCKNROLLを軸とした政治性の強いハードコア/パンクシーンが形成されていました。その中でJAWBREAKERは、同時代のメロディックパンク勢と地続きでありながらも、極めて個人的かつ内省的な感情表現を持ち込んだ異質な存在でした。特にBlake Schwarzenbachの文学的で自虐的なリリック、しゃがれ切ったハスキーボイス、そしてミッドテンポ主体の楽曲群は、後の90年代エモ/インディーロックへ直結する重要な要素として機能しています。本作の時点ではまだ粗削りでノイジーなパンク色も濃厚ですが、すでに後の“BIVOUAC”〜“24 HOUR REVENGE THERAPY”〜“DEAR YOU”へと繋がる、“痛みを抱えたメロディー”の原型が完成している点は非常に重要でしょう。DESCENDENTSやHÜSKER DÜ、THE REPLACEMENTS以降のメロディックパンク〜オルタナ文脈を吸収しつつも、後のJIMMY EAT WORLD、SAVES THE DAY、TEXAS IS THE REASON、さらにはTHE GET UP KIDS周辺へも波及していく“エモーションを中心に据えたパンク”の雛形が、この時点ですでに提示されています。さらにBlake Schwarzenbachは解散後、JETS TO BRAZILにおいて90年代後半インディーロック〜ポストパンク〜オルタナ路線へ接続していきますが、その繊細なメロディー感覚や“孤独を肯定するような歌詞世界”は、すでにこの“UNFUN”の時点で萌芽しています。後年“エモのルーツ”として語られる理由も、単なるジャンル的始祖というより、“感情そのものをパンクへ持ち込んだ”作品だからこそでしょう。