USカリフォルニア州サンフランシスコベイエリア出身のエモ/カオティックハードコアバンド「 PORTRAITS OF PAST 」が1996年にEBULLITION RECORDSから発表した唯一のアルバムが、2025年にリマスター仕様で待望の再発。Will Killingsworthによるリマスターに加え、失われていたオリジナルアートワークも当時の関係者によって可能な限り忠実に復元されるなど、作品への深い敬意を感じさせる仕様となっています。活動期間はわずか1993年から1995年。しかし、その短い時間で彼らが残した音楽は、後に「スクリーモ」と呼ばれるシーンの礎として語り継がれることになります。当時は決して大きな評価を得た作品ではなく、むしろ解散後に口コミやトレード文化を通じて世界中へ広まり、今では90年代アンダーグラウンドハードコアを象徴する一枚として揺るぎない地位を築いています。本作の魅力は、単なる激情では終わらない緻密な構成力にあります。鋭く切り裂くギターリフは繊細なアルペジオへと姿を変え、息を呑む静寂から一気に爆発する轟音、グルーヴィーなミッドテンポとファストコアが目まぐるしく交錯。Robert Pettersenの張り裂けるようなスクリームは怒りだけでなく、焦燥や喪失感までも剥き出しにし、荒々しい録音だからこそ生まれる生々しい空気感が、聴き手を1990年代半ばのDIYハードコアシーンへと引き戻します。HEROINやUNWOUND、DRIVE LIKE JEHUから受け継いだ緊張感を軸にしながらも、静と動を極限まで押し広げたダイナミクス、どこか物悲しいメロディ、そして破綻寸前の均衡で成立するアンサンブルは、後のFUNERAL DINERやSAETIA、さらには世界中の激情ハードコア/スクリーモ勢へ多大な影響を与えました。彼ら自身はあくまで「ハードコアバンド」として活動していましたが、その枠を大きく押し広げた存在だったことは間違いありません。30年近く経った今なお色褪せるどころか、むしろ時代が追いついたとさえ感じさせる圧倒的な完成度。90年代エモ、カオティックハードコアを語る上で絶対に避けて通ることのできない、まさに永遠のバイブルです。