1980年代の日本ハードコアシーンを代表するバンドのひとつとして知られる、東京拠点の重要バンド 「LIP CREAM」。日本ハードコアシーンの中でも特に強烈な攻撃性とノイズ感、さらにはスラッシュメタル的要素を併せ持つ独自のサウンドで知られています。当時はまだインターネットが普及していない時代であり、US/UKハードコアの海外シーンの影響を受けつつも、その情報は断片的なものに限られていました。そうした状況下で彼らはそれらを独自に咀嚼し、ハードコアの猛烈なスピード感とスラッシュメタルの攻撃性を融合させた、いわばクロスオーバー的なサウンドを展開。当時の日本ローカルシーンの中でのみ成立していた1980年代ハードコアムーブメントの特異な一側面を体現していました。その後、インターネットの普及によって当時の日本ハードコアシーンの存在は世界規模で再評価されることとなり、オリジナルのフィジカル作品はコレクター市場で高額取引されるまでに至っていました。本作は2026年、USエクストリームミュージックの総本山として知られる "RELAPSE" より、メンバー監修のリマスタリングを施したオフィシャルリイシューとして登場。
”罪 - SIN - ” - 1989年にSELFISHから発表された、実質的な最終アルバム。オリジナル盤は正式なタイトルを持たず、通称「ラストアルバム」と呼ばれていた作品であり、バンド活動末期の張り詰めた空気と思想的コンセプトが色濃く刻み込まれた異色作として知られています。オリジナル盤は、楽曲と音声ドラマが交互に展開していく構成となっており、それまでの作品群とは一線を画す、極めてシリアスかつコンセプチュアルな内容で制作されています(なお今回の再発では、音声ドラマパートはバンドの意向によりカット)。サウンド的には、前作 “Close To The Edge” における構築的で洗練されたアプローチからやや舵を切り、より荒々しく、暴走するかのようなスラッシーなハードコアへと回帰。鋭く切り裂くギターリフと暴発寸前のリズム隊、そして狂気を帯びたヴォーカルが複雑に絡み合い、全体を覆う不穏で破滅的なテンションを生み出しています。当時すでにメンバー間では思想的衝突や方向性の相違が顕在化しており、その内部摩擦こそが作品の緊張感を一層高め、結果としてよりカオティックで不穏なハードコアサウンドへと昇華されています。バンドの終焉を象徴するドキュメントとしての側面も持つ、LIP CREAMのキャリアにおいて極めて重要な意味を持つ一作と言えるでしょう。