NOTHING / A Short History Of Decay CASSETTE

USフィラデルフィア出身の「NOTHING」による2026年の5thアルバム、RELAPSEからRUN FOR COVERへの移籍後初となる作品です。ポストハードコアの出自を持ちながら、オルタナ〜シューゲイズリヴァイバルへと独自に拡張してきた彼らの方法論が、本作においてこれまでで最も大きなスケールで結実しています。本作は、従来のシューゲイズ像“軽やかで浮遊感のある音像”を意図的に逸脱し、より重く、機械的で、暴力性すら帯びたサウンドへと変換しています。とりわけ“Cannibal World”や“Toothless Coal”に代表される楽曲群は、MY BLOODY VALENTINE的な轟音美学を踏まえつつ、それをインダストリアル的質感へと押し広げたものであり、本作を象徴するキーワードとして“インダストリアルゲイズ”と呼ぶべき領域に到達しています。この“インダストリアルゲイズ”は、単なるノイズの増幅ではなく、リズムの機械的反復、歪みの質量、低域の圧迫感といった要素を強調することで、従来のシューゲイズが持っていた“夢見心地の曖昧さ”を、より現実的で肉体的な質感へと引き戻す試みとも言えます。その結果、陶酔と暴力が同時に存在する特異なサウンドが成立しています。また本作は、2014年作”Guilty of Everything”から続く“時間、後悔、自己対峙”というテーマの一つの帰結とも捉えられており、Domenic “Nicky” Palermo自身が語る通り“終章”としての意味合いを持ちながらも、同時に新たなフェーズへの接続点として機能しています。総じて本作は、轟音の中にある感情のディテールと構造的な緻密さが同時に成立した、現行オルタナ~シューゲイズシーンにおける重要な到達点の一つと言えるでしょう。
  • Label:RUN FOR COVER
  • Price:2,280
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