USシアトルのポストハードコアバンド「NO EDITS」によるデビューアルバム “We All End Up The Same” が、2024年にBETTER DAYS WILL HAUNT YOUよりリリースされました。そのサウンドは90年代後期〜2000年前後のDISCHORD〜JADE TREE周辺の方法論を強く参照しながらも、それを単なるリバイバルとして消費することなく、現代的な感覚の中で再構築した作品です。とりわけ本作で印象的なのは、JAWBOX以降の系譜を思わせる鋭利なギターワークと、絶えず変化する変拍子/リズム構築を軸にしながらも、その複雑性が決して“技巧性の誇示”に終わっていない点でしょう。JAWBOX、BURNING AIRLINES、FARAQUET、Q AND NOT U、MEDICATIONSといったDISCHORD周辺のバンド群、さらにはCHAVEZ、SHINER、THESE ARMS ARE SNAKES、ENGINE DOWN、KARATE周辺にも通じる、知性と肉体性が同時にせめぎ合う感覚が本作には濃厚に漂っています。一方で、そのサウンドは単なる90年代回帰ではなく、デジタル以後の断片化された感覚や、現代特有の不安定さを強く内包している点が特徴です。複雑に絡み合うアルペジオや急激なテンポチェンジ、唐突に切り替わるリフ構成を多用しながらも、異様なほどフックに富んでいます。特にヴォーカルは、激情的なポストハードコア由来の切迫感を持ちながらも、どこか抑制された内省性を保ち、ドラムとベースが単なるリズム隊に留まらず、ギターと対等に空間を切り裂いていくアンサンブル設計が秀逸で、ポストハードコアとマスロックの境界を自在に横断しています。また、本作には2020年代以降の“エモリバイバル以後”の空気感も色濃く反映、さらには近年のノイジーなポストハードコア再興とも接続しつつ、過去の文脈を引用しながらも“現在進行形の切迫感”として鳴らしている点が非常に興味深いところです。単なるオブスキュア90’sオマージュではなく、“今この時代に鳴るDISCHORD的感覚”を模索した作品と言えるでしょう。複雑で鋭利、それでいて異様に耳に残る。本作 “We All End Up The Same” は、90年代ポストハードコア/マスロックの遺伝子を受け継ぎながら、それを現代的な神経症的質感へと更新した、極めて完成度の高いデビュー作です。DISCHORD、JADE TREE、TOUCH AND GO周辺を通過してきたリスナーはもちろん、近年のポストハードコア〜ノイズロック再評価以降の流れを追っているリスナーにも強く推薦できる一枚です。さらに、リリース元であるBETTER DAYS WILL HAUNT YOUを主宰するJordan Welkerのバンド”PSWINGSET”にも通じる、複雑なギターインタープレイと感情の捩れを同時に抱え込んだ感覚との親和性も随所に感じさせています。