THUNDERCAT による2017年リリースの3rdアルバムが、2026年にジャパンオンリーの帯/解説付き仕様LPとして待望の再発。10インチの4枚組/ボックス仕様となります。かつてSUICIDAL TENDENCIESのベーシストとして活動し、スラッシュメタル/ファンクメタル由来の超絶技巧と、LAビートシーン以降のジャズ/ヒップホップ感覚を接続してきたTHUNDERCATの方法論が、本作において最もポップかつ自由な形で結実しています。現行LAビートシーン以降の感覚を象徴する作品でありながら、同時に70〜80年代AOR、ジャズフュージョン、P-ファンク、ネオソウル、ブギー、プログレッシヴロック、さらにはインターネット以降のミーム的感覚までも横断した極めて雑食的なアルバムです。高度な演奏技術と極端なポップネスが同時に成立している点が特徴的であり、複雑なコードワークや変拍子、6弦ベースによる流動的なフレージングを内包しながらも、その音像は驚くほどメロウで親密です。高揚感に満ちたメロウソウル、AOR的甘美さ、サイケデリックな浮遊感、シネマティックな音響処理、さらにはトライバルなファンクネスまでもがシームレスに接続されています。特に印象的なのは、それらを“引用元”として誇示するのではなく、極めて軽やかで現代的なポップミュージックとして再構築している点でしょう。短い楽曲が断片的に現れては消えていく構成も含め、従来のアルバム的構築というより、ストリーミング〜SNS時代以降の速度感や情報量をそのまま音楽へ変換したような感覚すら漂わせています。一方で、そのカラフルなサウンドの奥には、孤独感や喪失感、自己破壊衝動のようなテーマも色濃く潜んでおり、単なる“心地良いフュージョンポップ”へ回収されない複雑さを持っています。ジャズ、ヒップホップ、R&B、AOR、エクスペリメンタルミュージック以降の文脈を横断しながら、それらを極めて自然なポップミュージックとして成立させた本作は、2010年代以降のブラックミュージックを代表する重要作と言えるでしょう。