SQUIRREL BAIT / Skag Heaven LP

USケンタッキー州ルイヴィルのパンク/ハードコアバンド「SQUIRREL BAIT」による1987年唯一のフルアルバム “Skag Heaven” が再発。オリジナルはHOMESTEAD RECORDSからリリースされ、その後1997年にはDRAG CITY傘下のDEXTER’S CIGAR(Jim O’RourkeとDavid Grubbsによるレーベル)から再発。今作は2026年版リプレスとなります。後にSLINT〜THE FOR CARNATIONへ進むBrian McMahan、BASTRO〜GASTR DEL SOL〜ソロワークへ繋がるDavid Grubbsが在籍していた、ルイヴィル地下シーンの起点とも言える存在でした。80年代中盤のアメリカンハードコアが、速度や攻撃性だけでなく、楽曲の構築へ向かい始めていた時期、本作はその変化を異様な精度で封じ込めた作品として現在も語り継がれています。当時のルイヴィルでは、後のSLINT、BASTRO、RODAN〜JUNE OF 44へ繋がる独特のポストハードコア土壌が形成されつつありました。DCハードコア以降のDIY精神を受け継ぎながらも、そこへ不穏な静寂、変則的な展開、ノイズ、さらにはUSインディーロック的知性を持ち込み始めていた点が、この街の特異性だったと言えるでしょう。“Skag Heaven” はまさにその“全ての始まり”に位置する作品です。サウンド面では、HÜSKER DÜ以降のメロディックハードコアを下敷きにしながらも、単なるエモーショナルHCでは終わらない異常な緊張感が全編を支配。生き急ぐように突っ走るリズム、不安定に軋むギター、突然崩壊する展開、そしてBrian McMahanの切迫したヴォーカルは、後のSLINTにおける“静と爆発”の萌芽を既に感じさせます。一方でDavid Grubbsのギターワークや実験性には、後のBASTRO〜GASTR DEL SOLへ繋がるアヴァンギャルド性も明確に表れています。また、本作にはPhil Ochs “Tape From California” のカヴァーも収録されており、単なる地方ハードコアバンドでは終わらない知性や批評性も強く滲ませています。“疑似HÜSKER DÜ”扱いされるどころか、多くのリスナーがこの若きルイヴィルのバンドに衝撃を受けたのも当然でしょう。メロディックでアンセミックでありながら、同時に異様な技巧性と崩壊寸前の危うさを併せ持つ本作は、後のポストロック、マスロック、エモ黎明期の全てへ接続されていく重要作品です。さらに、本作制作時にはメンバーのの進学問題も重なっており、活動継続の困難さを抱えながら断続的に録音された背景も含め、“終わりへ向かいながら燃え尽きるバンド”としての切迫感が異様な熱量を生んでいます。RITES OF SPRINGにも通じる“感情の暴発”と、後のSLINT以降へ繋がる“構造化された静寂”が、まだ未分化のまま同居している、まさにアメリカ地下音楽史の分岐点そのものと言える一枚でしょう。
  • Label:DEXTER’S CIGAR
  • Price:5,280
  • Qty :