USニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライター 「Nina Nastasia」 が2006年にFAT CATからリリースされたした5thアルバム”Outlaster”が、2026年にリマスターを施して TEMPORARY RESIDENCE から再発。長らくアナログ盤が入手困難となっていただけに、多くのファンが待ち望んだ復刻です。90年代後半から活動を続けるNina Nastasiaは、派手なプロモーションやシーンとの結び付きとは距離を置きながらも、アメリカンフォーク/シンガーソングライターの世界で独自の存在感を放ってきました。その静謐で緊張感のあるソングライティングは、Steve Albiniをはじめ、Will Oldham、Jim White、Mark Kozelekら多くのミュージシャンから高く評価されてきました。特に初期作品から続くSteve Albiniとの関係は有名で、本作もシカゴのELECTRICAL AUDIOで録音されています。”Outlaster”はNina Nastasiaのカタログの中でも異色作として知られています。それまでの作品がアコースティックギターや最低限のアンサンブルによる張り詰めた静けさを特徴としていたのに対し、本作ではロサンゼルスのアレンジャー/マルチインストゥルメンタリスト Paul Bryan を迎え、小編成オーケストラを大胆に導入。さらにドラマー Jay Bellerose、TORTOISEの Jeff Parker が参加するなど、まさに理想的な布陣によって制作されました。当時のレビューでは、Nina Nastasiaがそれまで追求してきた“静寂の美学”を損なうことなく、より広大な音楽的スケールを獲得した点が高く評価されました。実際、本作のオーケストレーションは楽曲を豪華に見せるためのものではなく、彼女の歌が持つ孤独や痛み、そして繊細な感情の揺らぎをさらに際立たせるために機能しています。ストリングスやホーンが大きく広がる瞬間でさえ、中心にあるのは常にNina Nastasiaの静かな歌声です。2000年代半ばという時代を考えると、本作の評価はむしろ現在の方が高まっていると言えるかもしれません。インディーフォークやチェンバーポップが広く浸透した現代だからこそ、この作品が持っていた先見性や完成度の高さがより鮮明に伝わってきます。Joanna Newsom や Julia Holter、あるいは近年の室内楽的なシンガーソングライター作品を愛するリスナーにも強く響く内容であり、Nina Nastasiaのディスコグラフィーの中でも屈指の名作として再評価され続けています。