USミシガン州デトロイト出身のドリームポップ、シューゲイズユニット「LOVESLIESCRUSHING」による1996年発表の2ndアルバム”Xuvetyn”が、30年近い時を経て発掘/再評価され、名門再発レーベル NUMERO により待望の2枚組LP仕様で再発。メンバーはギタリストの Scott Cortez とヴォーカリストの Melissa Arpin を中心としたユニットで、90年代アメリカンシューゲイズの最深部に位置する存在として、今なお熱狂的な支持を集めています。1990年代初頭、イギリスでは MY BLOODY VALENTINE や SLOWDIVE がシューゲイズの可能性を押し広げる一方、アメリカではより地下的かつ実験的な解釈が進行していました。その中でも LOVESLIESCRUSHING は、ロックバンドとしての骨格すら曖昧になるほど極端に音像を拡張し、轟音ギターを“リフ”ではなく“空気”として扱った先駆的存在でした。彼らは PROJEKT から作品を発表し、同時代の LYCIA や LOVE SPIRALS DOWNWARDS と並びながらも、さらに抽象度の高いサウンドを追求していました。本作は1991年から1995年にかけて4トラックカセットレコーダーで録音された楽曲群をまとめた作品で、従来のポップソングの構造をほぼ放棄。歪み切ったギターのフィードバック、テープヒス、幾重にも重ねられた声の残響が溶け合い、まるで異次元から漂着した環境音楽のような世界を描き出しています。シューゲイズでありながらビートは希薄で、アンビエントでありながら強烈なノイズの質感を持つその音響は、後年のドローン、アンビエント、さらには現代のアンビエントシューゲイズやフォグゲイズの源流として再評価されることになります。LOVESLIESCRUSHING の作品群は長らく入手困難な状態が続いていましたが、近年になり NUMERO がアーカイブを掘り起こし再発を進めたことで、新世代のリスナーにも広く知られるようになりました。近年の GROUPER や MIDWIFE にも通じる没入感を、90年代の時点で実現していたことに驚かされます。霞のように滲むギター、言葉として判別できないほど溶解したヴォーカル、空間そのものを揺らすドローンが充満したサウンドスケープは、単なるシューゲイズ作品ではなく、90年代アンダーグラウンドが生んだ究極の音響芸術のひとつ。轟音と幽玄さ、そしてアンビエントの没入感が交差する、“音の中に消えていくための音楽”として昇華しています。しかしながら、こうした極めて埋もれていた作品に再び光を当て、現代における再評価を促すNUMEROの嗅覚と編集的視点は見事であり、そのアーカイヴ的意義も含めて、本作の再発は極めて重要な意味を持っています。