WIRE / Pink Flag CD

1977年に発表された「WIRE」の記念すべき1stアルバムにして、ポストパンクという言葉が定着する以前からその未来を予言していた歴史的名盤が、WIREの中心人物Colin Newman主宰レーベルPINKFLAGより再発。ロンドンのアートスクール出身者たちによって結成されたWIREは、当時のパンクシーンに身を置きながらも、反抗や破壊衝動そのものよりも「ロックの構造をどう解体するか」という視点で音楽を捉えていました。その結果生まれた本作は、同時代のパンク作品とは一線を画す異様な存在感を放っています。全21曲というボリュームながら、多くの楽曲は1〜2分台。無駄を徹底的に削ぎ落とした楽曲構造、鋭く刻まれるギターリフ、乾ききった音像、そして大胆な余白。一般的なロックが求めるカタルシスやドラマ性を拒絶しながらも、不思議な中毒性と緊張感を生み出しています。特に「12XU」や「Ex Lion Tamer」に代表される切迫感は、後のハードコアやオルタナティブロックの原型として聴くこともできるでしょう。本作の革新性は、単なるポストパンクの枠には収まりません。80年代以降のニューウェーブやインディーロックはもちろん、90年代以降のエモやポストハードコアにも計り知れない影響を与えています。FUGAZIが追求した反復とダイナミクスの美学、JAWBOX、SHUDDER TO THINK、AT THE DRIVE-IN、THURSDAYといったポストハードコア勢が見せた「激情と知性の共存」は、遡ればWIREが提示した方法論の延長線上にあります。また、ギターを単なるコード伴奏ではなく、反復するパターンとして機能させる発想は、SLINT、RODAN、SHELLAC、DON CABALLERO以降のポストロック/マスロックにも色濃く受け継がれました。さらに、そのミニマルなアンサンブルや余白を活かした音響設計は、後のインディーロックやエモシーンにおける"引き算の美学"にも大きな影響を与えています。驚異的なのは、本作が高度な演奏技術によって成立した作品ではないことです。「何を弾くか」ではなく、「何を弾かないか」「どこに空白を作るか」という発想だけで、ロックの新たな可能性を切り開いてしまったのです。パンクの初期衝動とアートスクール的な実験精神が奇跡的なバランスで共存した本作は、その後数十年にわたるインディーロック、エモ、ポストハードコア、そしてポストロックの源流として、今なお燦然と輝き続けています。単なる名盤ではなく、ロックの地図そのものを書き換えた歴史的作品と言っても過言ではありません。
  • Label:PINK FLAG
  • Price:2,580
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