USサンフランシスコ/ベイエリアのインディーロック/マスポップパンクバンド「P.E.E.」による1996年発表のデビューアルバムが、30周年記念盤として待望の再発。1993年にギター/ボーカルのJIM STANLEYとKELLY GREENを中心に結成。ドラムにはJ CHURCHやA MINOR FORESTでも活動していたAndee Conners、後にLOWERCASEへ参加するTiber Scheerがベースとして加わり、ベイエリアDIYアンダーグラウンドの一角で独自の存在感を放ちました。本作は、MARCH RECORDSよりリリースされたデビュー作。全22曲というボリュームながら、その多くは1分前後から2分台のショートチューン。短い楽曲の中に、フック、転調、リズムチェンジ、男女ボーカルの掛け合い、ジグザグに跳ねるギターが次々と詰め込まれています。まるで好きな曲の一番おいしいブリッジ部分だけを切り取って、予測不能な順番でつなぎ合わせたような感覚。普通なら破綻しそうなほどパーツが多いのに、不思議とすべてが楽曲として成立しているのがP.E.E.の異常な魅力です。サウンド的にはVELOCITY GIRLやARCHERS OF LOAFと比較されつつも、さらに細かく分解された楽曲構造と、矢継ぎ早に展開するポップな奇妙さはHEAVY VEGETABLEにもかなり近い感触があります。マスロック的な変則性を持ちながら、技巧を見せつけるのではなく、あくまでメロディとフックのために楽曲が転がっていく。その結果、複雑なのに難解ではなく、変なのにとびきりキャッチーという、P.E.E.ならではのマスポップパンクが完成されています。長らく知る人ぞ知る存在だったP.E.E.ですが、2023年にYouTubeチャンネル108 MICSによるミニドキュメンタリー “A Band Called Pee” が公開され、さらにRATE YOUR MUSICなどを通じた再評価が進行。オリジナル盤は中古市場で高額取引されるまでになり、2025年には全カタログが初めてデジタル解禁。そして2026年、30周年記念再発が実現しました。本作は、ただのオブスキュアな90’sインディ名盤ではありません。エモ、マスロック、インディーポップ、ポストハードコアがまだ明確なジャンル名に分かれる前の、混沌とした創造性をそのまま閉じ込めたような作品です。短く、速く、奇妙で、甘く、そして驚くほど胸に残る変態的ポップセンスと、ベイエリアDIYの無邪気な衝動が奇跡的に結びついた、再発見されるべくして再発見された隠れた大傑作です。