USボルチモア出身のLindsey Jordanによるソロプロジェクト、「SNAIL MAIL」が2021年にMATADORより発表した2ndアルバム。帯付き仕様で再入荷。16〜17歳の頃に制作したEP”Habit”が草の根的に広がり、2018年の1stアルバム”Lush”で一気にUSインディーの中心人物へと躍り出たLindsey Jordan。10代ならではの瑞々しい感情と、90年代オルタナティブ〜インディーロック由来のギターワークを武器にした”Lush”は、まさに時代の空気を変えた作品でした。その大きすぎる評価と期待を背負い、コロナ禍の停滞や私生活の揺らぎを経て、22歳で完成させたのが本作”Valentine”です。音楽メディアでもこぞって高評価を博し、リリース当時から2021年のUSインディーを代表する一枚として受け止められました。プロデュースはBrad CookとLindsey Jordan自身。従来のギターロックの骨格は残しながらも、シンセ、ストリングス、R&B的なリズム感、バラード、ジャム的な広がりまでを取り込み、単なる”Lush”の続編ではなく、ソングライターとしてのスケールを一段押し広げた作品となっています。表題曲”Valentine”の爆発的なサビには、若さゆえの衝動だけでは片付けられない切実さがあり、”Ben Franklin”ではそれまでのSNAIL MAIL像を更新するようなビート感と冷ややかな質感を獲得。”Light Blue”や”Mia”のような楽曲では、失恋や孤独、依存、自己嫌悪といった感情が、過剰にドラマ化されることなく、むしろ静かに沈殿していくように響きます。今聴くと”Valentine”は、2020年代初頭のインディーロックが“ギター回帰”だけでは前に進めなかった時代の象徴でもあります。90年代オルタナティブへの憧憬、ベッドルームポップ以降の親密さ、メインストリームR&Bやシンセポップの感触、そしてクィアな視点から描かれる恋愛の痛み。それらを無理にジャンルとして整理するのではなく、Lindsey Jordan自身の声、メロディー、そして剥き出しの感情へと収束させたところに、本作”Valentine”の決定的な強さがあり、今なおUSインディーの重要作として聴かれる理由があるのです。帯、解説、対訳付き。